目次
■『イノベーターのジレンマの経済的解明』を読むに至った背景
事業や製品さらに、会社には寿命があります。会社や事業には寿命があるということを前提に考えたら、会社は創業や買収、売却を繰り返して、主要事業を変化させていかなければ、生き残っていくことができないと考えることができます。
narumi-yamauchi.hatenablog.com
また、様々なことに寿命がある、もしくは、ライフサイクルがあると言う考え方は、別につい最近できた新しいものではありません。栄枯盛衰、盛者必衰、諸行無常など四字熟語から見るように、物事の移り変わりや変化について深い考察を含んだ言葉が以前からあります。
以前は新規の企業だったのに、ある程度年数を経て、既存企業として新規企業に追われる立場になります。新規企業であれば、新しいことに挑戦する以外に生存する道はありませんが、既存企業は違います。そして、既存企業は様々なリソースで新規企業を上回っているにも関わらず、イノベーションを生み出すことができていないと一般的に認識されているかと思います。
さらに、ビジネス的な競争戦略やイノベーションに関する様々な書籍が出ていますが、「どのようにすればイノベーションの創出をし続けることが可能なのか?」と言う問いに対して、具体的なアンサーを出してるものは非常に少ないのが現状かと思います。
他方で、企業としてイノベーションを創出し続けることを目指す上で、隠れた前提はこれは企業の視点で考えているということです。企業にとって生き残るためにイノベーションを創出し続ける必要がありますが、社会全体で考えると、別に、一つの企業が継続的にイノベーションを創出する必要はありません。新しい人が新しいことをやればいいのです。
このような中で、重要なことは自分はどの視座から物事を見ていて、どのようなことが知りたいかをはっきりとさせることです。そしては、僕は既存企業という立場から考えていきたいと思います。
ただし、自分の置かれているポジションは変化します。なので、現時点で置かれている立場(もしくは将来的に置かれそうな立場)から最適なものを選んでいくことも重要だと考えているので、たまには同じ問題を違う視点で考えたりもすることいいかもしれません。
余談は置いておいて、以上のことをまとめると『イノベーターのジレンマの経済的解明』を読むに至った背景は、既存企業はどのようにすればイノベーションを創出し続けることができるのか?という問いに答えることが目的です。
■イノベーションとは何か?
ビジネス界隈で使われてるイノベーションという言葉はかなり抽象的ではっきりと何を指しているのか分かりません。
そこで今回のイノベーションの定義は、
・新しい技術と工夫等をして、新製品を作り、販売し、普及させること
という一連の流れをイノベーションと呼ぶことにします。
さらに、製造過程と製品のイノベーションを分けて、プロセス・イノベーションとプロダクト・イノベーションに分けることにします。『イノベーターのジレンマの経済的解明』でもこのように分けています。
■どのようにすればイノベーションを創出し続けることができるのか?
『イノベーターのジレンマの経済的解明』を読んだので、早速、上記の問いに答えたいと思います。
イノベーションを創出し続けるためには、「創業」と「損切り」が必要という案外当たり前な回答になりました。
しかし、この本は経済学的な観点から理論を積み上げて、データから実証分析をしたものですので、『イノベーションのジレンマ』のように、インタビューやドキュメントを読んでざっくりと主張しているというものではありません。
イノベーションのジレンマ (―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press))
- 作者: クレイトン・クリステンセン,玉田俊平太,伊豆原弓
- 出版社/メーカー: 株式会社翔泳社
- 発売日: 2011/12/20
- メディア: 新書
- 購入: 59人 クリック: 811回
- この商品を含むブログ (397件) を見る
また、『イノベーターのジレンマの経済的解明』を読めばわかりますが、最後の結論はありきたりでも、結論までのプロセスが『イノベーションのジレンマ』に比べ緻密なので、信憑性があります。
このような理論や研究のおかげで、生存するためには「創業」をして事業を育成し、成功させること、いずれ主力部門を切り捨てることと言った本質的な問題から出発して考えることができます。見当違いな問いをしなくてもいいのです。
■なぜ既存企業は新規企業に遅れをとるのか?
では次に、そもそもなぜ既存企業が新規企業に遅れをとるのでしょうか?
『イノベーターのジレンマの経済的解明』では、この問いに「共食い」、「抜け駆け」、「能力格差」という3つのキーワードから回答しています。
・「共食い」
共食いは、既存の製品と新規の製品が代替可能な製品であればあるほど、既存企業の参入インセンティブは下がるというもの。
・「抜け駆け」
抜け駆けは、競合が増えれば増えるほど既存企業の利益は減るので、他社が市場を寡占、独占する前に先手を打つインセンティブは存在するというもの。
・「能力格差」
能力格差は、既存企業と新規企業の研究開発能力に関しては、既存企業の方が能力的に上であるということ。
つまり、既存企業は能力がないからではなく、既存企業のイノベーションに対するインセンティブが、新規企業に比べて足りないので、新規企業に市場を奪われるのではないかと回答をしています。
■まとめ
ここまでの思考を整理すると、
既存企業はどのようにすればイノベーションを創出し続けることができるのか?という問いには、創業と損切りをひたすら繰り返していくしかないかもしれない言えそうです。
さらにもう少し、踏み入って考えてみると、
・創業に関して
既存企業は既存製品と関わりの薄い市場に参入し続けることで「共食い」を防ぐことができそうです。
また、自社で創業をすることの他には、他社を買収するという手段も有効だと考えられる。そして、新規市場に参入し続けるということが必要なのはわかりますが、どのように新規市場を見つけ、参入していくかはこれまた別に大きな問題でしょう。。。
・損切りに関して
他方で、社内では今までの主要事業から出世した人が権力を握っていることがほとんどだと思われるので、正しい意見を発信したとしても、組織を動かすとなると実行スピードは遅れることは必須だと思います。
この問題は、現時点で、具体的な方法はわかりませんが、企業の方針や文化として誰が言うかよりもどんな正しい意見を言うかが重要という雰囲気を醸成したり、主要事業の人に権力が集中しない制度を構築する必要があるかもしれない。
ただし、この問題は普通の視点からでは回答ができない予感もしますが。。。
■今後の問い
雑ではありますが、次の問いとしては、
・新規市場はどのように見つけることができるのか?
・M&Aの成功事例に共通する要素は何か?
・継続的に主要事業が変化し、今も生存している企業に共通していることは何か?
・どのような基準、タイミングで損切りを行うべきなのか?
・どのように創業をすれば成功確率を上げれるのか?
・既存企業が創業し、成功し続けている事例はあるのか?
これらを今後は意識して、回答できるようにしていきたいと思います。