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コーポレートファイナンス入門|要約と感想


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問題意識

私自身の話ではありますが、下記のような問題意識を持ったことをきっかけに今回の本を手に取ることとなりました。

  • ファイナンスについての概要は多少頭に入っている
  • 理論的な裏付けを理解しながらファイナンスについて基礎力を付けたい
  • ファイナンスにおける前提となっている条件を知りたい
  • ファイナンスにおける様々ななぜにという問いを解消したい

既にネット検索や断片的な情報を収集したり、ファイナンスの漫画を通して、ファイナンスに関して大まかなイメージは掴めているものの、まだまだ一つ一つの断片がつながっていないという人です。 こういった人にはこの本を強く推奨したいと考えています。

コーポレートファイナンス入門〈第2版〉 (日経文庫)
 

著者について

まずは著者について簡単に触れていきたいと思います。

この本は、砂川信幸(いさがわ のぶゆき)氏が書いた本です。

砂川氏は神戸大学卒業後、新日本証券入社、その後、神戸大学大学院経営学研究科教授などを経て、京都大学経営管理大学院教授になった方です。主な著書には『日本企業のコーポレートファイナンス』『経営戦略とコーポレートファイナンス』『はじめての企業価値評価』などが挙げられます。

経歴からも見て取れるように本著は実践的な内容でもありますが、比較的理論的な視点から描かれた本となります。以下では、本著の要約を私なりに行っていきます。

コーポレートファイナンス入門の要約

企業運営を行っていく中で、様々なものと関わり合いながら活動を続けていきます。具体的には、企業×人、企業×モノ、企業×製品(サービス)、企業×お金といった関係性の中で企業活動を行っています。この中で、コーポレートファイナンスが取り扱う領域としては、 企業×お金の領域です。

コーポレートファイナンスとは、企業×お金の関係性に関する理論です。この中の大きな流れを先に説明すると「資金調達→投資決定と事業投資→ペイアウト」と言えます。簡単に言うと、お金を集めて、使い方を決めて、どう投資家(債権者含む)に返すかの考え方を学ぶということです。

まず資金調達について考えると、企業は自分自身がオーナーになった場合でも、他のいかなる場合でも、投資家からお金を集めます。ここでは、デッドファイナンスとエクイティファイナンスの2種類がありますが、どちらをどのくらい選ぶのかといった、資金調達と資本構成の関係性や考え方について学べます。

次に、投資家から集めた資金をどのような事業に投資をするのかを決めなければなりません。これを投資決定と呼びます。これにはM&Aなどの投資も含みます。

最後に、投資の成果としてはキャッシュフローや利益と考えられます。これらを内部留保に回すのか、株主の配当に回すのかなどの問題は利益還元や配当政策といった問題として取り扱われます。配当だけでなく、自社株買いもこの問題に含まれ、企業から投資家にお金を支払うこれらのものをペイアウトと呼んだりします。

そして、これらのプロセスの中でファイナンスを行う上で、基本的なキャッシュフロー、現在価値、資本コスト等様々な専門用語の考え方、説明を行っています。

以上の投資家から企業への資金の流れから最終的に投資家へ資金が還元されるまでの流れを考えるものがコーポレートファイナンスということになります。

コーポレートファイナンス入門〈第2版〉 (日経文庫)
 

私が気になったポイント

私がこの本を読んで気になった部分を下記に上げていきたいと思います。私の場合、実務上必要な作業を先に捉えたうえで、この本を読みました。意味が分かっていないにもかかわらず、実務上必要だったので何となく理解した程度でひたすら作業を行っており、前提となる知識が欠如していました。当初非常に気持ちが悪かったのですが、この本を読んで、点と点がつながる感覚を覚えました。私の場合、下記の基本的なポイントが記憶に残っています。(投資決定や利益還元などの部分についてもありますが、いくつかの前提を説明する必要であるため、ここでは割愛します)

資本コストの視点

企業が投資家からお金を調達した際のコストを「資本コスト」と言いますが、この「資本コスト」という言葉は企業側の視点であること。一方で、投資家視点での言葉は期待収益率(expected rate of return)と言います。他方で、債権者がお金を企業に貸した際にかかるコストは要求収益率(required rate of return)と言います。同じ現象を論じていますが、企業・投資家・債権者の視点によってそれぞれ切り出す言葉が異なっています。

キャッシュフロー

コーポレートファイナンスでは、お金の流れを考えるものです。しかし、これだけではイメージができない場合もあるかと思います。お金の流れを考えるとは、特にお金の出入りに注目することです。こうした方法でお金の量などを浮き彫りにしていきます。

資本コストとビジネスの関係性

当たり前ではありますが理論上、資本コストを上回るビジネスの成果が出ない場合、もしくは、期待されない場合、投資家・債権者からの資金調達は出来ません。

一方で、資本コストを上回るビジネスの成果が期待できる場合、投資家・債権者からの資金調達が可能となります。

これらのポイントに付け加える形ですが、投資家・債権者は一つのビジネスから投資先を選択するわけではなく、多数のビジネスから投資先を選択します。そのため、投資家・債権者から見て、最も期待収益率、要求収益率の高いビジネスに対して投資を行います。ただし、基本的に債権者よりも投資家の方が、ビジネスの成果が収益率に与える影響が大きいというポイントも見逃せません。

ROEと株式資本コスト

ROEと株式資本コストは比較することができ、長期的にROE>株式資本コストの関係性のままビジネスを実行し続ける場合、もしくは、期待される場合、経済的価値が付与され、市場価値が企業の簿価を上回ると言える。

リスクとリターン

コーポレートファイナンスで言うリスクの有無とは、キャッシュフローの変動のことです。また、その変動を確率論的に捉えて、リスクの大きさを比べます。例えば、好況・不況時に50%の確率でキャッシュフローが○○円増減するといったイメージです。これを将来のキャッシュフローが不確実であると言われ、リスクがあると言われます。ただし、不確実=リスクと捉えるとリスクの本質的な意味を捉えきれないと思いますので、リスクの大小=変動の大きさと理解するのが良いと考えています。

また、コーポレートファイナンスの投資家はリスク回避的であると考えています。そのため、同じリターンを期待できるビジネスが二つ以上ある場合、リスクが低いビジネスを選択します。

ただし、単純にリスクの低いビジネスだけに投資をするわけではなく、リスクの高いビジネスに投資をした際、より多くのリターンが得られる可能性があるものには投資をすることがあります。このより多くのリターンの部分をリスクプレミアムと言います。(リスクに対するリターンの割り増し)これを企業は支払う、投資家は期待することでリスクがあるビジネスでも資金調達が可能となります。

一方で、リスクのないビジネスがある場合、その収益率はリスクフリーレートと言います。したがって、リスクフリーレートにリスクプレミアムを加えた収益率が投資家が許容できるリスクの範囲内であれば、資金調達が可能なのです。

感想

私自身、この本を読んだ感想としてこれ一冊で基本的な知識が身につくものだなと感じました。個人的に通常のノウハウ本ですと、前提条件の説明に時間が使われていないことが多く感じました。様々な用語の前提や意味が簡単に一言・一文で説明され、何となくわかるけど、全容は把握できないといった気持ち悪さを抱えていました。

しかし、この本では理論的な前提条件にも説明が及んでおり、コーポレートファイナンスに関して、基本的な知識はこれ一冊で賄いきれるといっても過言ではないです。そのくらいの本だと思います。そこまで分厚い本ではありませんし。

ただし、実務的に今を乗り切るために必要な本を探しているといった方には全て読むことはお勧めできません。別の本を読むこと、もしくは、この本において、一部必要な部分のみ読む等が良いかと思います。このような状況の場合、分からないところも分からない状態のことが多いかと思いますので、基本的には実務寄りで、前提条件などかったるいことは言わずに、必要なものだけを知れる別の本をお勧めします。

以上、『コーポレートファイナンス入門』(日経文庫)に関する要約と感想でした。

コーポレートファイナンス入門〈第2版〉 (日経文庫)