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図解でわかる企業価値評価のすべて|要約と感想


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問題意識

早速ですはありますが、本書を手に取った時の問題意識は下記の通りです。

・1週間以内に何とか企業価値評価を行わなければいけなくなった

・そもそも企業価値評価って何なのか良く分からない

・かといって、しっかりと勉強するほどの時間が取れない

・企業価値評価の必要な部分だけでいいからとにかく実務を乗り切りたい

・バリュエーションの専門家と話さなければいけない

こういった私の課題に対して、図解を用いてわかりやすく説明しているものが本書でした。復習する際にも、デスクの上などに一冊あってもいいくらいの本だと思っています。また、本書の特徴として、無形資産価値評価の方法についても言及していることも挙げられます。上記のような課題を抱えている人、各種評価手法(バリュエーション)は分かったんだけど、やり方は?といった問いを持っている人は、是非本書を試されてもいいかなと思います。

図解でわかる企業価値評価のすべて

図解でわかる企業価値評価のすべて

 

著者について

『図解でわかる企業価値評価のすべて』の著者は株式会社KPMG FASという会社になっています。KPMGとは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供するプロフェッショナルファームのグローバルネットワークを指します。このグループネットワークは世界150か国のメンバーファームに138,000名のプロフェッショナルを擁し、サービスを提供しています。

このグループの中で、株式会社KPMG FASは日本における財務アドバイザリー業務の中核として、コーポレートファイナンス、リストラクチャリング、フォレンジック、トランザクションサービスの4つのサービスラインを擁し、顧客のニーズに合わせて適切なリソースを組合せ、総合的なアドバイザリーサービスを提供してます。

私自身も分からなかったので、フォレンジックなどの言葉の意味は下記に記載します。

  • コーポレートファイナンス:M&A、資金調達などの財務アドバイス
  • リストラクチャリング:企業再生及び企業価値向上に関するアドバイス
  • フォレンジック:不正調査、不正会計調査などのサービス
  • トランザクションサービス:M&Aに関する各種DDを提供するサービス

『図解でわかる企業価値評価のすべて』の要約

企業価値評価(バリュエーション)の使用シーンや使用方法について、基礎的な内容を図解で説明しながら、実務上、主に使われる3つの視点で利用される評価方法を説明しています。具体的には、マーケット視点・インカム視点・コスト視点による3つの評価視点からの手法を網羅的に説明したものということになります。 

図解でわかる企業価値評価のすべて

図解でわかる企業価値評価のすべて

 

私が気になったポイント

シナジー効果

本書ではシナジー効果のことを「複数の事業間における経営資源の統合・共有等による相乗効果」と定義しています。そして、シナジー効果とは大きく事業シナジーと財務シナジーに分けられます。そして、事業シナジーは収入シナジーとコストシナジーに分けられます。一般的には、スタンドアローン価値+シナジー効果=投資価値と考えられています。※スタンドアローン価値=評価対象企業が単独で事業継続した時の価値

そのため、理論上はスタンドアローン価値を下限として、シナジー効果を織り込んだ投資価値を上限として買収側と売却側で交渉を行います。

言い換えると、買収側は買収価格<投資価値は自社の企業価値の向上であるのに対して、売却側は売却価格>スタンドアローン価値であれば自社の企業価値向上となります。

収入シナジー

収入シナジーには下記の事例が挙げられています。

・販売製品寡占化による価格交渉力の強化
・販売チャネルの共有によるクロスセリング
・新興国等海外販路の相互補完
・ブランドの統一による商品認知度の向上
・技術・製造ノウハウの共有による新製品開発

※本書より抜粋

コストシナジー

コストシナジーには下記の事例が挙げられています。

・集中購買による調達原価の低減
・生産拠点の整理集約による効率化
・重複する物流・販売機能の整理・統合によるコストの削減
・重複部門の人件費削減、人員の有効活用
・研究開発の集約化による開発効率向上

※本書より抜粋

財務シナジー

財務シナジーには下記の事例が挙げられています。

・信用力の向上による調達金利の低下

・余剰現預金の有効活用

・税務上の繰越欠損金の節税効果

※本書より抜粋

プレミアムやディスカウント

企業価値を算定する際、事業価値だけではなく支配権を獲得することによる付加価値などがあります。これを支配権プレミアムと言います。これに対して、株式の流動性欠如による一定のディスカウントがあります。これを流動性ディスカウントと言います。この流動性ディスカウントはおおむね25~40%ほどの間で割り引かれます。

視点毎の評価手法

実際に評価を行っていく際に出会う問題として、分析をする上で、意思決定をしなければならない場面がいくつも出てきます。そのため、どのような判断軸に沿って決めればよいか分からないと一向に作業が進まないといったことが起きます。その際、本書を手に取りながら、どのような場面にはどのような手法での評価が適しているかを判断することができます。詳細な方法論については、本書に譲るとして、下記では簡単にどのような分析手法を紹介しているか記載していきます。

マーケットアプローチ
  • 株式市価法
  • 株価倍率法
  • 類似取引比準法
インカムアプローチ
  • DCF法
  • DDM法
  • 収益還元法
コストアプローチ
  • 修正純資産法

無形資産

事業価値を引き上げる上で重要な要素として、無形資産の向上があります。無形資産とは「その経済的特性によって現れる非貨幣性資産であり、物質的実体はもたず、その所有者に権利と特典を与え、通常その所有者の為に収入を創出するもの」と本書では定義されています。無形資産には、技術に基づくもの、マーケティング関連、顧客関連、契約に基づくもの、芸術関連、映画などの視聴覚データ、人材関連、戦略関連のものがあります。これらの評価方法については、まだ使いこなせていないこと、本書にて具体的に触れていることを考え、ここでは割愛します。

感想

本書を通して、企業価値評価(バリュエーション)の全体像の理解が深まるとともに、分析の流れが見えたことが非常に価値がありました。また、細かい部分ではありますが、各計算式に使う指標や数値の選択等については実務を通してでないと学べないこともあるかと思いますが、本書を読んでおくことでおおよそ理解することが可能かと思います。実際、私レベルの知能でもなんとか話についていけたので、普通の方なら倍速くらいで学べるんじゃないかと思います。

今回、バリュエーションを実際にやりながら本書を読み進めていくうちに、なぜある指標を使ったのか、なぜこの計算をしたのかを説明できるように、客観的な判断軸を持たなければなりません。そうでなければ、他人が評価した価値に対して、公正っぽいという判断ができません。社内での説得資料としても根拠が弱く自己満の資料となります。そのため、出典や指標の選択根拠等明示しておく必要があります。(当たり前なので、何か言っているようで何も言ってないことに等しいですが。。。)

以上、『図解でわかる企業価値評価のすべて』の要約と感想となります。

図解でわかる企業価値評価のすべて

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