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まんがで身につくファイナンス|要約と感想


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問題意識

以前、私自身の課題感ですが、ファイナンスに関して学びたい。とは思っていたものの専門書を読むまでは求めておらず、何か良いものはないかと探していました。とにかく、ファイナンスの概要を掴みたい。全体的な文脈の中で、ファイナンスを理解したいと考えていました。そんな中で見つけたのが今回要約する『まんがで身につくファイナンス』という本です。

私と同様の悩みを持つ方にお勧めしたいことはもちろんですが、下記の課題感を持っている人にもお勧めしたい内容です。

・ファイナンスに関して全くの素人

・ファイナンスをイメージとしてまずは捉えたい

・全体的な中でファイナンスの概要を捉えたい

・専門書を読むほど時間を取れない人

では、早速、本書について私なりにまとめていきたいと思います。

基本的には感想までは自分の意見を書かないように意識していきます。

 

まんがで身につくファイナンス

まんがで身につくファイナンス

 

 

著者について

著者の名前は石野雄一氏です。

経歴としては、下記のようになっています。

・上智大学理工学部卒業

・旧三菱銀行に入行

・米国インディアナ大学ケリースクール・オブ・ビジネス(MBA)修了

・日産自動車株式会社へ入社(財務部)

・旧ブーズ・アレン・ハミルトンに入社

・株式会社オントラックを設立

・ビジネス・ブレイクスルー大学 非常勤講師

このように金融畑を歩いてきている方、且つ、実務を経験している方が書いている本となります。

今回お勧めする『まんがで身につくファイナンス』の他に

『道具としてのファイナンス』

『ざっくり分かるファイナンス』などを書いています。

次の章からは早速、本の内容について要約を行っていきます。

要約

この本は一言で表すと、まんがというストーリー調な文脈でファイナンスという概念・ツールを説明している本です。特に、複雑な数式などは使わず、ファイナンスは企業価値を最大化させるツールであるという視点で描かれているものです。このような視点の下、アカウンティングとファイナンスの違い、ファイナンスにおける企業価値の構成要素等を説明した上で、事業価値と非事業価値について簡単に説明されています。

そして、企業価値を最大化するためには、事業価値を構成するフリーキャッシュフローの最大化と割引率を下げることが重要であることが述べられています。また、事業価値の創出に付随して、割引率の概念の説明や事業そのものに対する投資判断方法について分かりやすく回収期間法、NPV、IRR法の3つによって説明が行われています。

このような基本的な考え方を基に、日々の経営判断、ひいては企業価値の最大化を実現する方向性を示す道具としてファイナンスを紹介している本です。

まんがで身につくファイナンス

まんがで身につくファイナンス

 

内容

ここから『まんがで身につくファイナンス』の章に沿って内容をまとめていこうと思います。ただし、本に書いてある章をそのまま書いているわけではありません。あくまで言わんとしていることから意味がズレないようにしつつ、専門用語以外の部分については、なるべく私なりの言葉で書いていきます。

第1章 アカウンティング(会計)とファイナンス(財務)の違い

ここの章ではアカウンティングとファイナンスの違いについて述べられています。利益とキャッシュの視点、過去と未来の視点、財務三票への視点で語られています。それぞれの視点については下記以降でまとめます。

利益とキャッシュ

会社を運営していく中で、特別な理由がない限り基本的は会社を続けます。こうした企業を存続させるためには利益を出し続けなくてはなりません。ただし、利益を出している会社でも倒産をしてしまうことがあります。これが良く言う黒字倒産です。

このような黒字倒産を事例に上げたうえで、会社を存続させるためにはキャッシュが会社になければならないことを伝えています。

また、「会社を存続させるためにキャッシュが重要であるとするならば、利益という概念は必要なのか?」といった問いに対して、利益を計算する目的は税金のため、株主への配当金のため、企業内外とのコミュニケーションのためと述べています。

利益は意見、キャッシュは事実とも述べており、このようにアカウンティング(会計)では利益を扱い、ファイナンス(財務)ではキャッシュを取り扱うということで違いを強調しています。

過去と未来

もう一つの軸として、会計は過去の一定期間もしくは一時点を表す、もしくは管理するものですが、ファイナンスはお金の流れを対象にした概念であり、現在及び未来を対象に考えるものです。そういった視点でとらえると会計は過去、ファイナンスは未来といった対立軸で違いを明確にしています。

財務三票

アカウンティング(会計)は財務三票をアウトプットのみのものとして捉えて、BSよりもPLを重視する。ファイナンス(財務)はアウトプットのみならず、インプットの視点を加えることでBS・PL・CFといったものを使いお金の流れを捉えます。

第2章 リスク=損失?

危険と機会であり、ばらつきでもある

危機という言葉を使って、危険と機会の二つを合わせた言葉でリスクという言葉を説明しています。リスクという言葉は損失を表す意味ではなく、結果のばらつきの度合いを指す言葉。例えば株価が上がる、下がるといった場合、両方の場合で利益を得ることが可能です。そのため、この時点でリスク=損失という意味ではなくなり、上がる度合い、下がる度合いでリスクを捉える、つまり変動の度合い(ばらつき)のことを説明しています。

将来価値と現在価値

お金を受け取るタイミングによって価値が異なるといったことを将来価値と現在価値という言葉を使って説明します。将来価値とは現在のお金は将来いくらなのかを指します。一方で、現在価値は将来のお金は現在の価格でいくらなのかを指します。

単利と複利

先ほどの将来価値・現在価値とかなり関わりの深い言葉として、複利という言葉を説明しています。そもそも将来価値及び現在価値の算出時は複利を前提にしており、複利の前提なくして将来価値と現在価値の理解はできません。

期待収益率と割引率

上述した将来価値から現在価値に割戻す際に使う数字が割引率と呼ばれ、一方で、現在価値から将来価値に直す計算に使う数字が期待収益率と呼ばれます。割引率と期待収益率は別物の数字ではなく、表裏一体の関係の数字であることを説明しています。

第3章 企業価値の構成要素

ここでは、企業価値とは資金提供者視点の価値を表すものであることを説明します。

また、企業価値の構成要素について、BSで言う部分の右側の負債+純資産である「企業価値=債権者価値(有利子負債)+株主価値」といった捉え方と左側の資産である「企業価値=事業価値+非事業資産価値」の捉え方について述べられています。

事業価値については、企業が将来生み出すフリーキャッシュフローの現在価値の合計とされ、非事業資産とは遊休地や投資目的の有価証券などの事業とは直接関係のない資産と定義されています。

また、現在価値に直す際に使う割引率ですが、資本コスト(WACC)と呼ばれています。事業価値の向上にはフリーキャッシュフロー(FCF)を増やすか、割引率である資本コスト(WACC)を下げるといった二つのパターンでしか達成できません。

ちなみに、ここで言うフリーキャッシュフロー(FCF)はキャッシュフロー計算書に出てくる「FCF=営業CF-投資CF」とは定義が異なります。ここでのFCFは債権者と株主が自由に使える現金という意味になります。計算式は、「FCF=営業利益+税金+減価償却費ー設備投資ー運転資本の増加額」で算出されます。

減価償却費は非常に重要なポイントとして取り上げられており、費用として取り扱われていても、実際に現金が出ていくわけではないものとして考えられています。

もう一つ重要なポイントとしては運転資本です。「運転資本=棚卸資産+売上債権-支払債務」と考え、原材料を仕入れてから販売するまでを繋ぐ資金です。この増減をFCFにも反映します。

第4章 キャッシュの生み出し方

ここではキャッシュをどのように生み出すのかを話しています。PLアプローチという切り口からキャッシュを増やす方法が説明されています。単純に、PLアプローチとは、売上を上げ、コストを削減し、利益を増やすという当たり前のアプローチのことです。

売上を増やす

ここでは価格戦略について二つの興味深い事例が載せられています。

まずは、基本的な条件をそろえていきます。ある商品を売ると仮定して、下記の条件とします。

商品価格=100円

材料費=75円

利益=25円

販売数量100個=売上10000円、利益2500円

この条件の下、通り値上げ戦略と値下げ戦略の両方の事例を考えています。

1つは、価格を上げて販売量を減らす戦略です。販売価格を3%上げて103円とした場合、数量が10%ダウンして90個になったとしても利益は2520円となり増益になります。

2つは、価格を下げて販売量を増やす戦略です。販売価格を15%下げ、販売数量が20%増加した場合、価格は75円、販売数量は120個となりますが、利益は1200円となります。逆に、2500円の利益を維持する場合、250個(2.5倍)もの商品を販売しなければなりません。

この事例から考えられることは、売上高を増やすために、販売数量を増やすよりもどのようにして販売価格を上られるかにエネルギーを割く方が効果的であるということです。これらを具体的に分析する方法として「感度分析」という事例が挙げられています。(詳細は割愛します)。

費用を下げる

費用を下げるという行為について、いくつかの視点が提供されています。

1つは、サプライヤーマネジメントとユーザーマネジメントという社内と社外の利害関係者間の取引状態や条件を改善するといった方法です。

2つは、調達戦略についてです。特にサプライヤ-マネジメントのひとつと考えられますが、少数のサプライヤーに集中的に購入することでコストを下げたり、競争入札によってコストを下げる足りすることです。

3つは、間接材コストと直接材コストという営業活動にかかわる費用とそれ以外の費用という視点です。

4つは、運転資本を管理するということです。それはつまり、支払を遅らせたり、受取を早くさせたりすることによって、資金繰りを楽にさせることができます。ただし、これはPL項目ではなくBS項目であるため営業部隊などには理解されづらい概念です。よって、実行する際は、経営判断として行うことが必要です。

第5章 非事業資産

ここでは企業再生の状況において、通常の業務改善だけではキャッシュフローが足りず、アセットリストラクチャリング(資産の整理)が必要と考えられています。特に、事業のフリーキャッシュフローの増加に寄与していないものを洗い出して、キャッシュに変えることを指します。

また、ポイントとしては、あくまで「キャッシュフローで資産売却の是非を議論する」ことです。資産売却の際に重要な基準の一つとして、ROMVという概念も紹介されています。これは資産を保有し続ける場合と売却した場合のフリーキャッシュフローの現在価値を比較して売却の判断材料とする考え方です。

もう一つ説明されているポイントは、全部原価計算と直接原価計算です。全部原価計算は製造業などで利用されている考え方で、各製品に1個当たりの固定費を割り当てて、製品毎に原価を計算する方法となります。そのため、一見、利益は増えているように見えますが、キャッシュフローは傷んでいることがあります。

一方で、直接原価計算は、サービス業などで利用されている計算式です。生産数量に関わらず全額費用計上されます。そのため、売上数量によって、利益は変わりません。

第6章 投資判断の考え方

投資判断のフローは下記の通りです。

  1. 事業から生み出されるキャッシュフローを計算する
  2. 投資判断指標の計算をする
  3. 計算結果と基準を比較
  4. 投資判断をする

投資判断の考え方には大きく分けて3つあります。それは、回収期間法、NPV、IRR法です。

回収期間法

何年で投資金額のお金を回収できれば投資するといった考え方、方法論を回収期間法と言います。

この方法の問題点は、

・お金の時間価値を見ていない

・プロジェクトのリスクを見ていない

・回収期間以降を考えていない

・基準があいまい

といったことが考えられる。

NPV

NPVとは、事業が生み出すキャッシュフローの現在価値から初期投資額をマイナスしたものがNPVとなります。考え方としては、NPVがプラスなら投資、マイナスなら投資しないといった判断となります。ちなみに、NPVの現在価値を算出する際に利用する割引率はWACCとなります。

IRR法

IRRとは内部収益率とも言います。IRRとは事業のNPVがゼロになるような割引率のことを指します。つまり、事業の価値と価格がちょうどゼロになるような割引率を指します。単純にIRRが高い事業を選択するといった軸で判断します。ただし、IRRは規模は加味していないため、収益性のみに着目している指標であることは注意が必要です。

ちなみに、このIRRの意思決定はWACCと比較することで投資判断を行います。この関係性がIRR<WACC=投資見送り、IRR>WACC=投資実行といった判断となります。

第7章 無借金の捉え方

無借金経営が良いとする考え方の根底には債権者の視点が隠れています。というのも、債権者は借金が返ってくることを考え、安定性を重視するためです。逆に、株主は成長性を重視する傾向があります。その理由としては、債権者と株主とで期待するリターンが異なるためです。

感想

 『まんが身につくファイナンス』というだけあって、イメージ図も付いて、且つ、ストーリー性もあり、ファイナンスの各専門用語の解釈が行いやすいです。私自身、ファイナンスのイメージがつかめなかった頃、こういったストーリー調な文脈でファイナンスの知識を頭に入れることで言葉の大枠が掴めました。正直、この本だけでは物足りない場合があるかもしれませんが、初学者は非常に重宝する一冊かなと思います。まずは、この本でイメージだけを掴みたいという人におすすめです。逆に、ある程度ファイナンスを知っている人にはおすすめできない本です。

まんがで身につくファイナンス

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