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倒産プロセスと倒産企業の買収(M&A)について


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問題意識

今回の記事の問題意識は「そもそも倒産企業を買収することはどのようなメリット・デメリットがあるのか?」という問いが出発点です。この疑問が出た理由としては、企業再生ファンドなど企業再生を生業としている活動はどのような経済的価値を見定めて、どう投資判断しているのかと思ったからです。ここまでの理由がメインではありますが、他にも下記のような問題意識があります。

  • メリット、デメリットの前に倒産プロセスはどうなっているのか?
  • 倒産手続きという観点からどのような分類があるのか?
  • 倒産というカテゴリおいて、各種用語の位置づけ・関係性が分からない

これらの問題意識の下、私と同様の悩みを持つ方にも役に立つかなと思い、今回記事を作成しました。専門書やウェブ上の情報をそのまま書いたものではなく、私自身の解釈によるところがあると思いますので、その点は留意頂きながら読むと良いと思います

倒産とは

まずそもそも「倒産」とは何を指すのでしょうか。「倒産」について話す前に、「倒産」について定義を進めてみます。というのも「倒産」は法的な定義がないため、一般的なイメージで使われていることが多く、あまり意味について議論されることはありません。

東京商工リサーチの定義によると、「企業が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になった状態を指す」とあります。つまり、企業に関わる関係者にお金の支払ができず、事業継続ができない状態ということです。この定義で以下で使う倒産を使用していきます。

ちなみに、「倒産」と似た言葉で「破産」という言葉がありますが、こちらは法律用語としてしっかり定義されており、「破産手続き」のことを指します。これは企業の清算を目的とした債務整理手段となります。そのため、「倒産」はお金に困った状態、一方で、「破産」はお金に困った際の手段を指し、正式には意味合いは異なります。ただし、ディスカッションしている際は、文脈によって使い分けていない人もいるので、どのような意味合いで使われているのか注意が必要です。

倒産後のプロセス

倒産後のプロセスにはいくつかの分類があります。特に、今回私が抜粋する分類は、企業存続の可否による分類と法的拘束力の有無による分類を取り上げます。

清算型と再建型

こちらは企業存続の可否による分類で、倒産後の様々なプロセスを清算型か再建型かで分類している表現です。会社もしくは事業を継続せずに清算する倒産処理は清算型と呼ばれます。逆に、会社もしくは事業を継続する場合は再建型と呼ばれます。例えば、上記で述べた「破産」に関しては、企業を存続させずに処理するということから清算型に属します。またこれから述べることになりますが、「民事再生」は企業もしくは事業の継続を前提にした倒産処理であるため、再建型となります。このように、存続の可否によって、清算型と再建型によって倒産処理が分けられています。

私的整理と法的整理

こちらは倒産処理を法的拘束力の有無によって分類したものです。より実務的な視点となりますが、私的整理には法的拘束力がない倒産処理。一方で、法的整理は法的拘束力がある倒産処理となります。また、私的整理と法的整理は私的倒産と法的倒産などとも呼ばれることもあります。

私的整理

倒産の危機に瀕している企業や倒産企業について、裁判所を利用せず(法的拘束力を使わず)、債権者と債務者との間で協議を行い、清算もしくは再建を進めることを私的整理といいます。簡単に言うと、「倒産企業の後のことをお金を貸した人と借りた人で話して決める」という方法のことです。

法律で定められたルールがないということではありますが、私的整理に関係のある機関よりガイドラインが開示されています。そのガイドラインを共通認識として持ち、関係者間で私的整理を進めていきます。例えば、私的整理に関するガイドラインなどがあります。

また、債権者と債務者の間だけでは調整が現実的に難しいといった状況が多々発生するため、公的な第三者機関を通して私的整理を行う方法もあります。

私的整理に関する主な公的機関

主な公的機関は下記となります。今回の記事ではメインの問題ではないため、各団体についての詳細については割愛します。

  • 中小企業再生支援協議会
  • 事業再生ADR
  • 株式会社地域経済活性化支援機構(REVI)
  • 日本弁護士連合会

これらの公的機関が、私的整理において、第三者的な立場から債権者及び債務者の利害調整等を行っています。

私的整理のプロセス(再建型)

私的整理の大まかなプロセスとしては、下記の通りです。

  1. 私的整理の申出
  2. 債務の一時停止の通知
  3. 債務の一時停止
  4. 債権者との会議
  5. 計画策定
  6. 計画実行

次に、それぞれのプロセスについて概要が把握できる程度にまとめていきます。

1.私的整理の申出

債務者が主要債権者に対して、ガイドラインに対する私的整理を申出する。その後、債務者は必要な書類を主要債権者に提出し、債権者は内容を精査の上、私的整理を検討します。

2.債務の一時停止の通知

私的整理の検討価値があると判断した場合、主要債権者と倒産企業は対象債権者全員に借金返済等の一時停止通知を送付します。この時点より、私的整理の手続きが開始したことを意味します。

3.債権者との会議

債務者による私的整理の経過状況、財務状況、計画などの質疑応答を行い、その他重要事項を決議します。この際の各種決議事項は、対象債権者全員の一致のみでしか決議できません。

4.計画策定

無事に私的整理について全員一致で決議できた場合、再建に向けて現状把握を行い、適切な計画を策定します。

5.計画実行

計画を実行し、債権者に対して返済を行いつつ、事業再生を行っていきます。

以上が私的整理における大まかなプロセスとなります。通常であれば、上記のプロセスに併せて、資金繰りの対応が必要となることがほとんどかと思いますが、どこのプロセスにも該当するため、除外しました。

法的整理

次に、法的拘束力のある法的整理について話していきます。法的拘束力については、下記の倒産処理方法があります。また、それぞれが個別の法律にて定められており、手続きについても異なります。そのため、ここでは概要のみに触れることとします。

清算型

  1. 破産(裁判所に破産の申し立てを行い会社の清算を行う倒産処理)※破産管財人が清算処理を行う
  2. 特別清算(債権者の3分の2以上の同意により清算を行う倒産処理)※株式会社のみ

再建型

  1. 民事再生(民事再生法に基づき、現経営者の下、会社及び事業の再建を図る倒産処理)
  2. 会社更生(会社更生法に基づき、裁判所の選任した管財人の下、会社及び事業再建を図る倒産処理)※更生管財人が清算処理を行う
法的整理のプロセス

法的整理にプロセスは、それぞれの方法によって異なりますが、今回はイメージがしやすいように破産の場合のプロセスを記載します。

  1. 弁護士に相談
  2. 再建と清算の判断
  3. 破産手続きの決定・事業停止
  4. 受任通知(弁護士から債権者に通知するもの)
  5. 会社財産の保全など
  6. 情報収集・資料準備
  7. 破産申立
  8. 破産開始決定・破産管財人の選任
  9. 破産管財人と会議・進行
  10. 債権者会議の開催
  11. 債権者へ配当
  12. 完了・廃止決定

といった大まかな流れとなります。あくまで基本的な流れですので、事例によっては違うパターンもある可能性があります。

倒産手続き企業をM&Aするメリット・デメリット

上述した私的整理と法的整理による倒産企業ですが、ここでようやく倒産企業を買収する際に必要な前提条件が整いました。この章では、倒産企業買収のメリット及びデメリットを整理していきたいと思います。買収である以上、事業規模の拡大、時間を買うといった通常のメリットの他に、以下で示すようなメリットやデメリットが存在します。

私的整理については、金融債務以外の取引債務などは減免が行われず、再建する過程においても支払義務は生じます。そのため、法的手続きのような債権の失権効という概念も通用しません。そういった意味では、基本的なM&Aと同様のリスクを懸念する必要があります。

下記では、特に法的整理におけるメリットデメリットについて述べていきます。

メリット

過剰債務解消(法的整理の場合)

法的整理において、過剰な債務を縮小し、買収側が買う際には倒産企業の負債額は総資産や事業価値に見合った価格まで調整されることになります。そのため、過剰な債務を負わないで買収することが可能となります。

失権効による偶発債務

M&Aにおいて、買収後偶発債務が表面化した場合、基本的に買収側が責任を負うこととなります。しかし、法的整理においては、債権者によって債務の認否や調査が進められ、顕在化と判断されない債務については原則失権します。そのため、偶発債務のリスクは通常のM&Aよりも小さいと言えます。

組織法上の手続きがシンプルに

通常のM&Aの場合、会社法上に順守し、株主総会や取締役会の決議が必要です。それに対して、法的手続きによる倒産手続きにおいては、事業譲渡などの組織再編行為が織り込まれた再生計画が可決認可されることで、裁判所の許可と債権者の意見聴取手続きがあれば実行できます。

欠損金の活用

倒産手続き企業において、繰越欠損金に加えて期限切れとなった欠損金について一定の要件下に損金算入できることが規定されています。そのため、買収ストラクチャ次第では、一定の税務メリットを享受できます。

抜本的な改革

通常の買収とは異なり、企業文化や諸制度の統合・調整の優先度は低く、一度倒産していることから抜本的な改革が行いやすい状況となります。そのため、スポンサーがついている買収の場合、V字回復した事例は多数あります。

デメリット

債権者が主要な利害関係者

通常の場合と異なり、株主ではなく債権者が倒産手続きの発言権を持っています。そのため、法的整理、且つ、法廷整理の場合は、債権者の法定多数によって再生計画が決定・実行されます。よって、債権者を納得させることが非常に重要なことになります。他方で、私的整理の場合は、債権者全員の同意を持って計画が成立するため、債権者の意向に左右されます。

事業価値毀損

法的整理の場合、倒産手続きが公となり取引先や顧客が離反します。また、役員や従業員などの退職が発生し、事業価値にマイナスの要因となります。これらを防ぐために、可能な限り早くスポンサー選定を進め、信用力のあるスポンサー企業の支援を周知させる必要があります。

競争入札

債権者の理解を得る上で、公平で透明性のある方法が求められるため、競争入札といった方法が採用されるのが一般的です。そのため、買収側からすると買収価格が想定よりも高額になる場合があります。

スケジュール

法律の定める手続きに沿って、倒産手続きが進められます。そのため、買収企業として候補する場合、迅速な対応が求められます。

債務免除益課税

債務免除を受ける場合、債務免除益課税が発生する可能性があります。そのため、税効果等を検討することから、買収ストラクチャの選択肢が狭まってしまうことがあります。

表明保証や損失補償の実効性が低い場合

表明保証や損失補償をしても売却企業である経営者や株主に責任追及しても倒産企業であるため、損失補償をしたところで、実際に回収できる可能性は低いと考えられます。

まとめ

今回、倒産プロセスと倒産企業の買収についてまとめた記事になります。具体的には、倒産処理には私的整理と法的整理の二つに分類できます。倒産企業にとっての私的整理と法的整理のメリットデメリットなどは別の機会に譲るとして、いずれの方法にせよ最低限の債権者を保護することが重視されていることが分かると思います。

というのも、通常だと株主が会社の各種事項に対する決定権を有しているものですが、倒産企業においては、債権者がその役割を担っているといっても良い状態です。

また、買収に関する基本的なメリットやデメリットはあるという前提の下、「なぜ倒産企業を買収するのか」という問いに対する回答は、法的整理による倒産手続きの場合は、倒産時の債務が縮小されるなどのメリットが考えられ、倒産前よりもリスクが低く購入することができます。一方で、私的整理による倒産手続きの場合は、法的な側面によるメリットは相対的に少なく感じます。一般的なM&Aと同様に偶発債務等のリスクの可能性は否めません。

ただし、時間が経つごとにどんどん選択肢は狭められるため、倒産手続きは法的ないし私的整理のいずれにしよスピード感が求められる業務となります。スピード勝負で買収を検討することで、競合を出し抜き(競争相手が通常より少なく)、通常よりも割安な価格で買収が行える場合も少なくないでしょう。また、様々な債権が存在し、まだ価値のある債権を見極め、その債権を買い取るといった方法も考えられます。この場合、既存債権者から考えると価格さえ折り合いがつけば非常に魅力的な提案に思います。

これらについて、どこかのタイミングで破産管財人や更生管財人及び私的整理における各公的機関がどのような業務プロセスで債権や債務の調整を行っていくのかについて調べたいと思います。以上、倒産プロセスと倒産企業の買収(M&A)についてのまとめとなります。