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『バリュエーションの教科書-企業価値・M&Aの本質と実務』:森生明(著)の感想<パート1>


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はじめに 

バリュエーションの教科書

バリュエーションの教科書

 

 

まず、本書は『バリュエーションの教科書』と言うだけあって、バリュエーションのことについて書かれた本です。

バリュエーション(valuation)とは、資産の価格算定、M&Aとかで会社の企業価値や株価を算定する際に使われる言葉です。

ものすごく、平易に言うと、ただ単に「価値を価格に変換しましょう」ということを英語で言ったくらいの意味です。

著者は、「バリュエーションと言うとなんとなく高度な感じがするけど、日常生活でも意識的にしろ、無意識的にしろ、値付けしてますよね。」と主張しています。

例えば、家・車・服・靴・食事とかを購入する際、購入後に「どれだけテンションが上がるか」「どれくらいの効果があるか」「どれだけモテるか」「どれくらいお腹いっぱいになるか」とかっていうことと、値段が相応のものなのかを何となく考えたりしているよね?と。。。

また、著者は、「価値を生み出す活動と金儲けする人がずれており、格差が拡大しているのが社会の実情ですよね〜」と言う意見には同意をするものの、「世の中の各個人が、投資家が、経営者が、価値に見合った値段を付け損なう結果、生み出していると言う自覚を持たない限り、いつまで経っても良くはならない。」と考えているようです。

以上の著者の問題意識から、『バリュエーションの教科書』では、価値と価格のギャップが生まれるのは「評価基準=バリュエーション」の問題だ、と言う視座で世の中を捉えることを試みている内容となっています。

そして、現場感覚でシンプルに考えることを意識した作りになっています。また、本書の構成は積み上げ式での説明ではなく、全体像からの把握をスタートに説明を試みています。

第1章 企業価値は財務諸表にどうやって現れるのか?

ここでのメッセージは、「株価以外に企業価値を測るより良い基準を見つけることのが難しいと言う前提の基、バリュエーションの中心となる考え方は「PBR=PER×ROE」であり、企業価値算定の全ての構成要素が凝縮されている」と言うことです。

 

これだけでは意味がわからないと思うので、

まず、以下に用語の整理をします。

PBR(Price Book-Value Ratio,株価純資産倍率)は指標の名前で、意味するところは、「株価はその会社の1株当たり簿価純資産(株主資本)の何倍か?」を意味します。

PER(Price Earnings Ratio,株価収益率)は、「株価はその会社の生み出す1株当たりの利益の何倍か?」を意味します。

ROE(Return on Equity,株主資本利益率)は、「会社は株主資本(株主の投資総額から年率何パーセントの利益をあげているか?」を意味します。

以上までが用語整理です。

 

では、なぜ「PBR=PER×ROE」が成り立つのでしょうか。

PERを分解すると「株式時価総額/税引き後利益」となります。

ROEを分解すると「税引き後利益/簿価株主資本」となります。

 

そして、

PER「株式時価総額/税引き後利益

ROE「税引き後利益/簿価株主資本」

PBRは「株主時価総額/簿価株主資本」となります。

 

これで、計算式としてのつながりは見えましたが、一体「PBR=PER×ROE」が何を指すのでしょうか?

 

企業価値の全体構造について

ここでのメッセージは企業価値の本質は「のれん」の創造ということです。会社は単なる資産の塊ではなく、事業資産に人材やアイディア・ノウハウ・ブランド・信用などのを加えて、付加価値を生み出していきます。この無形資産をまとめて「のれん」と言います。

企業がどのような資産をどのような資金調達によって持っているのかは貸借対照表(以下、B/S)に表現される。しかし、「のれん」は通常のB/Sの左側に現れない。一方、B/Sの右側の資本(純資産)は、株主からの出資と会社の内部留保からなり、上場会社であれば、市場で株式時価総額と言う値段がつく。

そうなると、B/Sは左右が一致するようにできているので「のれん」価値を創造している会社は、純資産の直と簿価の差分だけB/Sの左側に、差分を埋めるだけの資産価値が存在すると考えられる。

これが数値化された「のれん」となる。(ちなみに、非上場会社はM&A等のイベントが起きない限り、数値化されることはない。)

そのため、企業の「のれん」価値創造力は純資産の時価と簿価の比率であるPBRで表現できる。

 

次に、ROEに関しては、利益を稼ぎ出す足元の効率性(短期的視点)として考えられ、PERは将来への期待とリスク(長期的視点)を表現したものと考えられる。

 

以上の考え方から、「PBR=PER×ROE」は「のれん」価値の創造力を資本効率性と将来の成長期待の掛け算で数値化して表現されていることがわかる。

 

さらに、企業の将来の成長期待の部分については、企業のビジョンを描く力とそれが実現できるかのリスクを通じて数値化を試みていく。

 

これを企業価値=企業が将来にわたって生み出すキャッシュ・フローの現在価値と表現することができる。

 

次回、また続きから要約と感想をまとめていきます。

本日はここまでとします。

 

バリュエーションの教科書

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