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北の達人コーポレーションの企業分析をしてみる


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今回は少し趣向を変えて、企業分析を記事にしていこうと思います。というのも、企業のビジネスモデルや外部環境の分析などを行っても、なかなか自分の仕事に活かす機会がないのです。現在の僕の仕事上、アウトプットのクオリティが求められるにも関わらず、アウトプットの回数が特別多いというわけではなりません。

そのため、アウトプットのクオリティを上げる機会を設けようと考えました。今回、自分が株式投資をすると想定して、企業のビジネスモデルや外部環境の分析などを行い、文章に落とし込んでいこうと思います。

このようなアウトプットを通して、リサーチによるインプット→アウトプットのプロセスの改善が見込めるのも期待してます。

最終的には、記事の対象者としては、投資家や経営企画部の方々にも読んでもらえたらと考えています。

では、早速、分析を始めていこうと思います。

 

北の達人コーポレーションとはどのような会社か?

北の達人コーポレーションという会社は、インターネットを通して、ToC向けに健康食品や化粧品を販売するEコマース事業を展開しています。「北の快適工房」というサイトにて、アトピーや便秘など体の悩みのサポートに特化した商品開発、販売をしています。2020年2月期の売上は100億円、営業利益は29億円と営業利益率は約30%と驚異的な数値となっています。

 

北の達人コーポレーションの成績は?

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出典:https://minkabu.jp/stock/2930/settlement

 

売上高と営業利益ともに継続的に増加しています。売上高に関しては、2017年2月期から3年間で約4倍の売上高に成長しています。営業利益は、約6倍に成長しています。

普通のECのように見えるビジネスですが、売上規模が100億円、営業利益率30%の29億円となっています。

 

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出典:https://www.kitanotatsujin.com/wp/wp-content/uploads/2020/04/rep_20200414b.pdf

 

他の東証一部上場企業との違いとして、従業員一人当たりの営業利益が2.2倍、ROEが通常の13.2倍という驚異的な数値となっています。

このような状況で、売上高に100億円にスケールしているのにはどのような秘密があるのでしょうか。。。

 

創業者はどのような人物か?

このような企業を創った創業者はどのような方なのでしょうか。

創業者の名前は「木下 勝寿」氏。

早速、木下氏の経歴をざっくりと下記に箇条書きにてまとめたいと思います。

  • 1992年にリクルートに入社
  • 1999年に独立、合資会社サイマートを設立(大阪)
  • 2002年に㈱北海道・シーオー・ジェイピーを設立
  • 2012年、札幌証券取引所アンビシャス市場に上場
  • 2014年、東京証券取引所第二部に上場
  • 2015年、東京証券取引所第一部に上場

北海道での創業前での事業にて、失敗した反省から、次に事業を行う際は、顧客満足を満たせる事業を行うことを決意。そして、独自の分析により、北海道が一番チャンスのある場所だということで、北海道にて創業を決断したようです。

北海道にて創業後、2007年に「北の快適工房」とともに、北海道の特産品で規格外品などを取り扱う「北海道わけあり市場」を開設した。「北海道わけあり市場」はマスコミに取り上げられ、バズった経験があります。しかし、それ以降、類似サイトも急増し、競争が激しくなったため、「北海道わけあり市場」を売却。

差別化のために「北の快適工房」での健康・美容商品の開発、販売に特化したという背景があります。

 

どのようなビジネスモデルなのか?

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出典:https://www.kitanotatsujin.com/wp/wp-content/uploads/2020/05/rep_20200529.pdf

 

上記のものが、北の達人コーポレーションの有報に乗っている体系図です。当社が商品の企画→製造依頼→マーケティング→販売→物流→顧客サポートまでを行ってビジネスを行っています。製造以外の部分を当社が請け負うことで、無駄なコストを減らし、高収益体質を維持しているように思います。ただし、これだけで、ここまでの高収益企業となっているわけではありません。

もう一つのポイントとしては、定期購入を前提とした商品設計、ビジネスモデルとしていることです。このような設計、ビジネスモデルの結果として、売上高の約7割が定期購入からの売上となっています。

また、解約率に関しては月に定期購入者数のうち約10%となるようです。例えば、100億円を12か月で割った場合、ひと月約8億円の売上を上げています。定期購入者の売上がそのうち約7割なので5.6億円となります。この5.6億円のうち、10%は0.56億円となります。この0.56億円以上の新規会員を毎月獲得できれば、売上はある程度まで増加するということになります。文章だとわかりづらいと思うので、下記に箇条書きにしました。

 

前提条件

  • 解約率は定期購入者のうち10%/月
  • 売上高100億円を想定(年間)

計算

  • 月次売上高を計算:100億円÷12=約8億円
  • 月次定期購入売上を計算:8億円×70%=5.6億円
  • 月次解約額を計算:5.6億円×10%=0.56億円
  • 結論:0.56億円<新規獲得総額=売上高増加

 

どのような課題があるのか?

決算説明資料を見ると当社は下記のポイントを課題として認識しているようです。

  1. 新規獲得件数の伸び悩み
  2. 商品開発スピード

新規獲得件数の伸び悩みを広告配信の適切な運用ができなかったことが直接的な原因と定義。この原因の発生した要因については、メンバーが急速に増加したため、体制及び教育の不十分とのこと。

対策としては、教育体制の強化、管理職の配置、経験者の中途採用強化を行い、クリエイティブメンバーのスキル向上に注力。

一方、商品開発スピードに関しては、2020年3月期の商品リリースは3商品のみ。主力商品が健康食品から基礎化粧品に移行している。健康食品のニーズが一定なのに対して、基礎化粧品は比較的需要の変動があるとのこと。そのため、一定の間隔で商品をリリースしなければいけないところをできていなかったことが課題と捉えている。

この対策としては、1商品ごとの商品開発期間を短縮することはせず、商品企画開発を多数並行して進められるような体制を強化する。具体的には、品質にかかわらない企画プロセスの見直し、経験者の採用などによって解決する方針。

 

今後の戦略は?

今までの戦略は、競合の少ないニッチマーケットで1商品10~20億円のものを複数展開することで高利益率のビジネスを展開。

結果として、100億円を達成。100億円を達成することで得た知見として、

・ニッチ×トップシェアでなくても高利益率をキープするスキルを得た

・1商品で40~50億円の事業を創るノウハウを得た

・戦略的な課題感として、ニッチのみだと成長余地に限界が生まれている

これからは1商品50~100億円を複数展開、高利益率を維持しつつ、売上高1000億円、営業利益300億円を目指す。具体的な商品群としては、オールインワンゲルやシャンプーなどを考えているとのこと。

 

株価はどのような動きをしているか?

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2018年以降、株価の変動はあるものの、400~800円くらいの幅に落ちついている様子。直近の時価総額は674億円。

まとめ

北の達人コーポレーションのここまでの成長ドライバーはロイヤルティの高い商品を多数開発することで、定期購入者を獲得してきたことと考えられる。

100億円規模までは順調な推移で成長してきているが、今後の課題については疑問が残る。というのも、市場規模の大きい商品では、ロイヤルティの高い商品を開発することは難しくなるのではないか。そうなると、定期購入につながらなくなってしまうのではないかと考えられる。当たり前のことではあるが、今後、ロイヤルティの高い商品をスピーディーに開発することができるのかが今後の成長戦略の中で重要なポイントかと思う。