ビジネス×中国×投資×読書の人の話

ビジネス×中国×投資×読書に関することをメインに。たまに関係ないことも。

MENU

一橋ビジネスレビュー ビジネスケース キーエンスを読んだ感想


Sponsored Links

一橋ビジネスレビュー ビジネスケース「キーエンス」

今回は、高収益企業として有名なキーエンスを取り上げた、一橋ビジネスレビューのビジネスケースを読んだので感想をまとめていきたいと思う。

簡単に、キーエンスについて説明すると、対法人向けの事業で、主な製品は産業用のセンサーや顕微鏡といったものである。

売上も目を見張る業績なのだが、それよりも突出しているのは、売上高営業利益率である。2000年に1,000億円の売上高を達成し、2007年に2,000億円を達成したのだが、その間の売上高営業利益率は40%を下回ることなく推移しており、2003年以降の5年間では、50%以上を維持している。つまり、2007年時点で、1,000億円もの売上高営業利益を叩き出している。

ちなみに、日本の製造業平均は4〜6%程度なのに対して、50%は驚異的な数字だと考えられる。このレビューではどのようにして、キーエンスが50%という営業利益率を叩き出しているのかについて述べられている。 

さらに、驚くべきことは、人件費を削って営業利益率を上げているわけでもなく、人材に対しても相応の費用を負担しており、従業員の平均年収は1300万円以上となっている。

ビジネスケース『キーエンス?驚異的な業績を生み続ける経営哲学』―一橋ビジネスレビューe新書No.7

ビジネスケース『キーエンス?驚異的な業績を生み続ける経営哲学』―一橋ビジネスレビューe新書No.7

  • 作者: 一橋大学イノベーション研究センター,延岡健太郎,岩崎孝明
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2014/04/21
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログを見る
 

 

キーエンスの経営哲学

キーエンスは、新たな価値をなるべく多く創造して世の中に提供することこそが社会貢献だと定義している。

そして、キーエンスの経営哲学を結論から述べると、「付加価値を最大化」させることである。この最大化とは、「最小の資本と人で最大の付加価値をあげる」ということを意味している。これを言い換えると、なるべく低コストで開発や製造をして、高価格でも顧客が喜んで商品を購入してくれる商品を創り出すということである。

もっと簡単に言うと、安く作って高く売るという商売の基本中の基本を徹底していると言える。

付加価値を上げる方法は、二つある。それはコストを下げるか、商品の価値を上げるかの二つである。

キーエンスは、最新技術に振り回されずに、クライアントの顕在ニーズ、潜在ニーズを聞き分け、潜在ニーズに対してアプローチを行うことで、独自性の高い商品を提供し、高付加価値を生み出している。

また、独自性を生み出すためには、他社に開発できない商品。もしくは、潜在ニーズを満たす商品である。

以下では、どのような組織体制で高付加価値を生み出しているかについて述べていく。

 

キーエンスの組織文化

キーエンスでは、従業員全員に「企画」が求められる。すべての担当部署や担当作業に対して、どのようにすれば改善や効果が上げられるかの定量的な提案を要求され、同時に、教育が行われる。

また、徹底的に考えることを社員に求めており、もっとも多く考えた人が正しいとする価値観がある。というのも、徹底的に考えるということは、強烈な問題意識を持ち、情報収集し、真剣に解決策を考えた人だけが行えると考えているからである。

そして、仕事を任せる時は、ただ作業だけを指示するのではなく、目的を明確にした上で、作業を行ってもらうことで、担当者の企画力を鍛えるという目的がある。

ここまでは社内の価値観の部分だが、顧客を徹底的に知るために、他社のリサーチデータだけではなく、直販営業による顧客のヒアリングを徹底的に行っている。これだけでは属人的なシステムとなってしまうが、キーエンスでは顧客とのコミュニケーション履歴を残した顧客データベース、商品の活用・成功事例集、様々な業種の製造工程を解説してまとめたものの3つが存在しており、これを活用して新入社員や営業部員のコミュニケーションスキルを向上させている。

 

他方で、付加価値を実現するために、様々な制度が存在する。月次営業利益を社内に公表し、会社全体の付加価値を毎月確認する。そこから従業員に対して、業績賞与として月間の営業利益の一部を一定割合社員に分配するという制度である。

また、時間チャージという制度もある。これは、各社員が1時間あたりに創出すべき付加価値額が決められ、今年度の計画粗利額(付加価値額)を全社員の総就業時間で割り、役職によって調整した額である。この指標があるため、従業員は付加価値額の全体額を上げるか、費やす時間を減らすかという二つの方向の改善が求められる。

この指標は商品企画や会議をする際にも使われる。具体的には、会議をする分だけのコストに見合うのか、このメンバーを集める必要性があるのかについて検討するために時間チャージが利用される。このようにして、無駄なメンバーや会議を減らすような設計をしている。そして、同時に、意思決定のスピードにもこだわっている。判断が遅れる、リリースが遅れるだけで数千万円の機会損失が生まれてしまうからである。このような意識をもってもらうためにも時間チャージという指標が活用されている。

 

キーエンスはどのように顧客ファーストを実現しているのか

キーエンスは自社の商品によって、顧客はどれだけの価値を創出・享受できるのかという軸で販売価格を決定することから、徹底的に顧客ファーストを意識している。

顧客からのヒアリングだけではなく、顧客自ら悩みや課題を言ってもらえるような関係づくりを日頃から行っている。

 

キーエンスはどのように価値創造しているのか

キーエンスは独自の強みとして、コンサルティング営業と商品開発だと認識している。とにかく、この2つの軸に集中できるように製造に関してはファブレスとして商品を製造している。

このように付加価値を最大化するためにリソースをキーエンスなりに効率よく配分している。

 

感想

 キーエンスは高付加価値を創出する企業として有名であり、この高付加価値を生み出す源泉は、

  1. 付加価値の最大化を目指す経営哲学
  2. 企画や問題意識を持って取り組んだ人間を評価する価値観
  3. 時間レベルでコスト意識を持たせる制度
  4. 顧客を知るためのデータベース
  5. 顧客の潜在ニーズに集中するためのリソース配分

ということが上げられるのではないかと思う。

キーエンスの経営方針がすべてといってしまったら、それでおしまいだが、様々な部分でコストや付加価値を意識させる制度があることが非常に重要なのではないかと感じる。上記の文章では触れていないが、世に出す商品の基準として、粗利が80%以上でないといけないというルールもある。このような基準や制度を継続的に実行させ続けることが肝なのではないかと考えることもできる。

ビジネスケース『キーエンス?驚異的な業績を生み続ける経営哲学』―一橋ビジネスレビューe新書No.7

ビジネスケース『キーエンス?驚異的な業績を生み続ける経営哲学』―一橋ビジネスレビューe新書No.7

  • 作者: 一橋大学イノベーション研究センター,延岡健太郎,岩崎孝明
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2014/04/21
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログを見る