問題意識
筆者である私自身が感じていることですが資料作成をする際、
- 伝えたいことが伝えられない。
- 気を付けているつもりが、ただの作業として資料作成を行ってしまう。
- 要約ができているようで全くできていない。
- そもそも何を伝えるのかが明確になっていない。
- どのような伝え方が良いのか分からない。
- 試行錯誤しているうちに何となく落ち着いたものの再現性に疑問が残る。
- 資料作成のレベルが上がっている感じがない。
といった問題に遭遇しています。
私自身がこのような問題に直面しており、暗黙知になっている知識を文章にすることで、意識的に自分の知識に、再現性のある知識にとしようと考えています。
一方で、この体験が他のビジネスマンにも役に立てば良いなと思っても書いています。おそらく、同様の課題感を持っている人がいるかと思います。
資料作成はすでに知識が体系的にまとめられていますが、本を読む前にネットで調べたといった傾けにも有効であればいいなと希望してます。。。
ただ、私自身、今回の記事を本を読みながら書いているわけではないので、全ての重要な要素を網羅しているわけではありませんし、私のやり方が正しいということでもありません。実際、様々な書籍を読んでみると分かりますが、書籍によっては重要なポイントが異なるといったものや良く見受けられます。そのため、今回の内容は私自身がビジネス(実践)を通して得た資料作成の考え方と重要なポイントをまとめていくというものです。
資料作成の用途
最も重要で根本的な問いですが、そもそも資料作成は何のためにやるのでしょうか。この問いに対する答えとして思いつくものを下記に箇条書きしました。
- 記録としての資料
- 議論の材料としての資料
- 意思決定の材料としての資料(最終的には行動に繋がる材料)
ビジネスにおいて、基本的にはこの三つが資料作成の主な目的なるかと思っています。このうち、記録に関しては正確に主要な内容を文字等に残し、情報を抽出する際に使いますので、あまりノウハウは必要ないのかなと思います。(困っている人がいたらすみません)そのため、一旦、この「議論の材料」「意思決定の材料」という用途毎に分けて資料作成について考えていきたいと思います。
議論のための資料に必要な要素
まず初めに、「議論のための資料」の目的とは何のことでしょうか。非常に曖昧な目的です。議論とは「互いの意見を述べ合い、論じ合うこと」です。そのための資料なので、要するに「何を検討するかを検討する」ということです。
言い方を変えると、ある段階での目的や目標を決めるための資料というのが正しいかもしれません。ただし、検討すべきものによって、話し方や見せ方は変わってくることは要注意です。「議論の材料」としての資料にて、検討するレベルは下記が考えられます。
- 対象物
- 方法論
- 組合せ
- 記録
これらの検討レベルによって、どのような見せ方をすべきか、どの程度の情報量が必要か、資料作成のためにどのような調査方法を採用するべきかなどが変わってくるでしょう。
したがって、議論のレベルによって必要なものが変わってくるということです。しかし、これだけでは議論のための資料作成に何も活かせません。
次に、必要な問いとしては、「具体的にどのような方法で資料を作成すればいいのか」と立ててみようと思います。その問いに答えるために、下記に、私自身の方法論・作業フローの使い分けを列挙していきます。
対象物
- 検討項目列挙
- 検討項目確認
方法論
- 解決策列挙
- 解決策確認
組合せ
- 組合せを列挙
- 組合せの確認
書き出してみて気づきましたが、ここで行われることは検討すべき項目を列挙し、選択肢提示、その選択肢そのものを検討するという行為です。
それぞれの選択肢の内容については検討しません。(場合によってはここで検討する場合もあるかもしれません)。
したがって、ここでは、必要項目の列挙→確認といった基本的な作業フローになります。この行為そのものは、何かを決めるという意味で、意思決定の1つです。
ただし、実際の行動を伴うということは稀であり、意思決定のための資料とは大きく異なります。
意思決定のための資料に必要な要素
次に意思決定に必要な要素はどのようなものでしょうか。早速、下記に思いつく限り列挙しました。
- 現状分析
- 問題定義
- 解決策列挙
- 利点・欠点整理
- 解決策実行効果・程度比較
- 結論
- 実行計画
- 人員編成
- 実行
- 計測
- 改善
- 管理
これらの伝え方の順番は、読み手によって変える必要があります。また、次の意思決定者につなぐ場合や実行責任者に指示を出してもらう場合は、資料の内容は結論までで良いでしょう。一方で、実行責任者が最終的に実行に移す場合、担当者と実行計画及びその後の運用まで落とし込むことで実際に物事が動き始めます。これも誰を対象とするか、実務は伴うのかといったポイントを意識しながら資料作成を行う必要があります。また、期限などを加味した上で、読み手に対して必要な部分だけを提示できるように資料を作成する必要もあります。このように、「議論のための資料」よりも複雑に見える「意思決定のための資料」ですが、資料作成には普遍的、基本的な要素があります。その要素について気を付けることで、一定のクオリティの資料作成ができるようになるはずです。では、早速、私なりに要素を整理していきたいと思います。
「意思決定のための資料作成」のポイント
「意思決定のための資料作成」で重要なポイントに行く前に、これら資料作成の基本的な要素とは何でしょうか。それは下記の要素です。
- 文字
- 線
- 絵
- 色
の4つの要素です。これ以上の要素もこれ以下の要素もありません。資料とはこれらを組み合わせる創造的な仕事です。では、なぜ事務的な仕事になってしまう場合があるのでしょうか。それは「書かれていることをそのまま資料に書く。」といったことを資料の大部分において行っているためです。それは、まさに事務的な作業となり、資料そのもの価値が低下します。重要なポイントですので、下記にて詳しく考えてみようと思います。
自分の言葉で書かれていない資料はなぜ価値が低いのか
理由の一つは、その人の資料を見ずとも元々の資料を見れば事足りるからです。そもそも資料の存在意義すら疑われるレベルの仕事です。ただ、油断するとやってしまうのが人間ですね。私自身もやってしまいます。しかし、これは問題であり、改善する必要があります。
もう一つの理由としては、資料や文章は何かを人に伝えたい、人を動かしたいからこそ作成するものです。それなのにもかかわらず、作成者の意図がない、伝えいたいことが明確でない資料は、読者の立場からすると結局何をして欲しいのか分かりません。「意思決定のための資料」は読み手に意思決定させることにのみ価値があります。そのため、ただのコピペでは価値が低く、どのようにすれば読み手が意思決定が行えるかを考えながら資料を作成しなくては価値の高い資料ができません。ただし、結果的に読み手に取ってコピペの方が良いということもある場合もあるかもしれません。このような前提条件を含めながら考えていくことが非常に重要です。
このように、人のものをコピペしただけのもの、伝えたいことが明確でない資料は価値が低いものです。つまり、メッセージ性がない資料は価値が低いということです。
ではどのようにしたらメッセージ性を強めることができるでしょうか。
メッセージ性
そもそもここで言う、メッセージ性とはどのようなものでしょうか。メッセージ性とは、「読み手に伝えたいことを伝えたいように伝える」という性質のことです。例えば、
・一番シンプルなものが文章で「イチゴが大好物」と書くと好きなのが伝わります。
・色で言うと、赤であれば「緊急であること」を伝えます。
・太文字であればこれは「強調したいキーワードですよ!」と伝えます。
・下線が引いてあったら「ここはポイントですよ」ということ伝えます
ただし、こういったメッセージは使う文脈によって意味が異なります。使う相手、前後関係によって、使い分けを行った方がいいですが、そこには必ず何かしらのメッセージが伴います。このようにして、蓄積した知識と伝えたい内容を「文字・線・絵・色」に落とし込み、最適な形で読み手の目の前に映し出すというのが意思決定のための資料の醍醐味です。次に、メッセージの意味は分かったけど、一体どうやって伝いたいメッセージを明確することができるのか?といったことが重要になってきます。というかこれが一番資料作りにおいて重要なものです。
メッセージの獲得
ここが正直にいって、資料作りで一番重要なポイントです。メッセージはどのように獲得すれば良いでしょうか。
目的の把握
それは、まずは何のために資料作りをするのか?という問いの回答を明確にすることです。これは当たり前なようで、当たり前でありません。慣れるまで意識的にやり続けるしかありません。というのも、ふと雑務などに忙殺されると目的を明確にせず資料作りを始めて、全く見当はずれな資料作りをしています。もしくは、結果的に見当はずれとなってしまった資料でも自分のノウハウとして蓄積しないといった問題が起きます。では、どのように資料の目的を明確にしたらよいでしょうか。私自身が良くやっている方法は、5W1Hで資料について考えるということです。例えば、まずは資料のテーマを明確にして、ざっくりでいいので5W1Hの形で問いを立てていき、自分なりに答えていきます。資料毎に必要な問いのレベルも異なるため、必要性に応じて問いの回答をさらに細かく分けたりしていきます。
パターン①
テーマ:A商品の導入効果を伝える資料
Why:商品を売るため、お客さんの課題を解決するため
What:パワポ作成→提案しに行く→導入してもらう→アフターフォローする
Who:○○商社の○○部、○○さんに提案をする
When:来週の火曜日午前11時
Where:○○商社のオフィス
How:資料を見せながら口頭で説明
パターン②
テーマ:AとB商品の導入効果を伝える資料
Why:お客様にあった商品を提案するため、状況をヒアリングするため。
What:初回資料作成→初回ヒアリングしに行く→次の提案に活かす→再提案資料で提案
Who:○○水産の○○部、○○さんに提案をする
When:来週の金曜日午前15時
Where:○○水産のオフィス
How:ZOOMにて画面を映しながら口頭で説明
パターン③
テーマ:○○新規事業立案資料
Why:社内にて○○事業を取り組んだ方がいいため、決裁者を説得するため
What:事業計画書作成→投資委員会で提案→事業部創設→実行
Who:○○水産の○○部、○○さんに提案をする
When:来週の金曜日午前15時
Where:○○水産のオフィス
How:ZOOMにて画面を映しながら口頭で説明
この整理をするだけで、何となく最終的な成果物がどのような形か、または参考にできる成果物はどのようなものかなどイメージできるかと思います。ただし、この時点で調査や資料作りを始めてはなりません。私は良くこの段階で資料作りを始めてしまいますが。。。
最終成果物をイメージ
まずは最終的な成果物をイメージできるようにしてください。イメージ図をドラフトとして絵に書いたりしましょう。この時、細かすぎる必要はありません。絶対に後から付け足したり、修正したりするので、神経質に作成する必要は全くありません。
これを行った後に、改めて、ドラフトで書いた最終成果物を作成するには、どのような要素・項目が必要かリストアップします。そして、リストアップしてみた後に、優先順位を付けて対象物に関する調査を進めていってください。
そうしないと、何となく調査を始めて大量にインプットした後に疲れる→疲れてようやくアウトプットを始めるという惰性での資料作りとなります。これは経験上、成長の傾きが低くなり、工夫して作成している人とではスピードも質も雲泥の差が出てきます。気を付けましょう。
調査&要約
調査を進めていく際、気を付けたいのが、ただ調査をして「ふむふむ」するということです。これは最終的に価値の低い模倣資料を生み出す根源です。では、どのようにしたら、良いのでしょうか。それは「要約しながら読む」ということです。これって要するに何だろう?これは一言で言うと何だろう?を繰り返しながら、メモを取りながら調査を進めて下さい。これをやらなかったら、後半戦の資料作りの時に死にます。
また、忘れてはならないのが、良くわからん単語に出会った時です。めんどくさいのですが、ほっとくと後で痛い目を見ます。しっかりと自分で定義できるまで理解した上で、次に進みましょう。時間がないなら、あとででもいいので、理解しましょう。マジで。
さて、ここまで調査を通して、ある程度伝えなければならないメッセージの内容やその優先順位が掴めてきた段階で資料を作り始めます。ここまで上手くできれば、正直これ以降の作業は簡単です。
文字・線・絵・色について
唐突に、「本とか決算説明資料とかを読んでデザイン勉強するのが一番いいです。」と言ってみます。これは本当です。。。メッセージを獲得したら、あとはそのメッセージを「文字・線・絵・色」にのせるだけです。私が一般的にクオリティの高いと感じる資料に共通しているのは下記のポイントです。
・資料の並び順、文字の並び順にもメッセージがある
・文章が多すぎない
・それぞれの要素の関係性がビジュアル的に分かりやすい
・一般的なデザインに沿って作成されている
・情報の重みづけがビジュアル的に分かりやすい
資料である以上、だれかの読み物になります。そうなると、読み手にとってどのような映り方をするかといった視点を持つことです。ただし、読み手は普段から資料のデザインや読みやすさに注意を払っていないので、ただ読みづらいと感じただけで資料が読まれなかったり、理解できないキーワードがあれば、資料作成者は何を言っているのか分からないといった主張をします。
読み手に一度このような認識を持たれてしまうと、その場での反論や読み手の考え方を改めさせることは非常に難しくなります。これが提案だったり、その他説得資料だったりした場合、即座に失注となります。
したがって、資料は常に読み手が理解し易いもの。読み手が読みやすいもの。読み手が見やすいもの。が要求されます。これは相手にゴマをすっているわけでもなく、恩を売っているわけでもなく、自分自身の主張を通すためには必要なことです。
なぜなら、いくら提案・説得しても最終的に動いてもらうのは、読み手だからです。動くときは読み手が理解しないと動かないですよね?自分の場合もしかりです。提案されても理解できないものにはOKを出すでしょうか。余談ですが、私は仲いい友人ならOKを出してしまうかもしれません。これは気を付けないといけませんね。
デザイン
デザイン的なところで言うと、大きく二つ重要な点があると思っています。それは、見やすさと分かりやすさです。似て非なるものです。見やすさとはビジュアル的に、分かりやすさとは内容的な話です。この二つの要素は、読み手に理解してもらうという目的から考えると非常に重要なポイントとなります。
見やすさ(物事の重み付け・関係性が分かりやすい)
見やすいデザインとはどのようなものでしょうか。私の考える見やすいデザインとは、何が重要かどうかが分かりやすいデザインです。例えば、重要なキーワードには赤文字。もしくは、文字サイズを変えたり、太文字にしたりすることでどの情報を一番伝えたいのかを強調します。
また、箇条書きなどをする場合は、レベル毎に段落を統一するなどすると情報が重み付けされていきます。また、簡単に理解できるものというのは、デザインとして一般的に普及しており、何も説明しなくても、読者はいつも通りの読み方で、内容が理解できたりします。
簡単に理解できる(内容が分かりやすい)
伝えたい内容が整理されており、資料に記載されている順番だったり、要素同士の関連が分かりやすい。このようなものは理解し易い資料となります。さらに、文字に関して言うと、主語述語が明確で主張が分かりやすい、読者が知っている言葉で説明されているといったことも重要なことです。
まとめ
さぁ、まとめに入ります。入らせてください。私の資料作成のポイントをまとめると、
- そもそも何の資料を作るのか自覚する
- 作成する資料の目的は何か5W1Hで整理する
- 最終的な成果物を絵に書く
- 最終成果物に必要な項目をリストアップする
- 調査しながら、要約してメモを残す
- メモをさらに要約して伝えいたい内容を整理、優先順位を付ける
- 資料に落とし込む(すべての要素にメッセージ性を付けて)
- セルフレビュー(説明してません)
- 他社レビュー(説明してません)
以上となります。また、ここで今さら感も否めないですが、5番・6番・7番の段階で自分のどのような視点・立場から要約したのかといったメタ的な見方を持つとまた一段違った意見を生み出せるかと思います。余裕がある人は試してみてください。私は引き続き、鍛練を積んで、満足できるレベルまで持っていきたいと思います。
余談ですが、この前気になることを先輩にアドバイスして頂きました。「コンサルは意思決定しない」「経営は後悔しない意思決定をすること」「一流のコンサルは私情を挟まずサードパーティとして提案する」といった言葉です。なぜ心に突っかかっているのか気になっているのですが、おそらく、今後、個人的に経営に走るのか、参謀的なポジションを築くのか、困るタイミングが来るんだろうなと思っています。現時点では、決めるのが好きなので経営側の人間として生きていきたいと思ってます。ただ、意思決定のプロセスは学びたいと思っているのでしばらくは、経験値をアップさせていこうと思います。。。