目次
はじめに
先に整理しますと、BIG5やFAMGAはどちらもFacebook、Apple、Microsoft、Google(Alphabet)、Amazonのことを指します。どの企業も規模は非常に大きく、5社の時価総額を合計すると3兆ドルほどになります。
最近では、このような規模感で活動するBIG5に対して、人々が危機感を持ち運動などが起きています。
しかし、一体何が問題なのでしょうか?
ただの感情的な問題なのか?
それとも構造的、社会的な問題を引き起こしているのか?
このような自分自身の問いに答える形で今回も書いていきたいと思います。
それぞれのIT企業の特徴は何か?
そもそも、まずはそれぞれの企業が何をしているのかを代表的なサービスを中心に整理していきたいと思います。(代表的なサービスを記載しているだけで、全部のサービスを網羅しているわけではなりません。)
各種SNSを中心とした広告ビジネス。
- Apple
スマホや各種端末を中心としたアプリのプラットフォーム。
- Microsoft
OSやアプリ、クラウドなど幅広くビジネスを展開している。
- Google(Alphabet)
検索エンジン、様々なWEBサービスをもとにした広告ビジネス。
- Amazon
ネット通販やクラウドなどを中心にビジネスを展開。
正直、IT系のサービスは以上の5社にほとんど集約されているような状況です。
そして、私たちが生活する上でこの5社のサービスや製品と関わらない日があることの方が非常に珍しい状況になっています。
さらに、消費者がサービスを使う時のデータを利用して様々な改善や新しいサービスを生み出しています。
世間ではどのようなことが問題として取り扱われているのか?
では次に、BIG5はどのようなことが問題視されているのかを確認していきたいと思います。以下に幾つかの論調を箇条書きで書いていきます。
- 寡占のような状況では健全な競争が行われない
- ビッグデータの寡占的な所有
- 税金逃れの問題
- 伝統企業の衰退を招いている
- 過激な内容やフェイクニュースによる世間への悪影響
- ある領域においては一国よりも強い力を持っている
次の章では上記の主張がなぜされているのかについて言及していきたいと思います。
以下は参照元です。
なぜ寡占のような状況では健全な競争が行われないのか?
寡占や独占のような状況は、なぜ健全な競争が行われないのでしょうか?
この主張の拠り所は、資本主義、市場経済と言うところと強く関わっています。
先に簡単に結論を言うと、独占・寡占が資本主義や市場経済を中心とする社会システム自体を脅かすのではないかと考えられているからです。
先に資本主義について確認します。
資本主義は何かものを生産するためには個人の権利として資本を持ち、富を増やそうとする考え方です。
次に市場経済という考え方について確認します。
市場経済は市場の需要と供給によって世の中の商品の価格が決まるという考え方です。
何かの商品をたくさんの人々が欲しいと思っていれば、たくさんの企業が商品を生産します。逆に、何かの商品を少数の人々が欲しいと考えれば、少数の企業が商品を生産します。
これらの需要・供給のうち、
需要は欲しい人々で決まり、供給は企業の競争によって効率的に配分されます。
また、世の中は上記の資本主義と市場経済と言う考え方を持っている人が大半です。(社会科学という分野の限界もあり、理論としては構築されていますが、この制度自体が果たして完全にいいものなのかどうかということを厳密に証明されているわけではありません。)
ですので、個人的、社会的な視点から考えると、ある分野で寡占や独占をされた場合、資本が寡占・独占企業に集中します。すると、個人や特定の社会に機会が平等に与えられないということで、資本主義と言う社会システム自体が成り立たなくなると言う危機感を人々は持ちます。
加えて、経済的な観点から考えた時、寡占・独占をされると需要と供給による適正な価格調整が行われないと考えられています。すると、寡占・独占をされた分野の商品が人々に適正な価格で提供されないのではないか?非常に高い値段で販売するのではないか?という危機感を人々に持たせます。
以上の理由から、健全な競争が行われないと主張されていると考えられます。
ビッグデータの寡占的な所有
この主張の根幹は、人々にとって大切で有用なデータが数社の企業によって寡占されているため、社会にとって有効活用できていないのではないかというものです。
これを理解するためには、今後の世界でのデータの重要性について理解しなければいけません。
ここ数十年でデータを収集・保存・分析するコストや技術が格段にレベルアップしました。また、今まで様々な判断・行動のための知識が一定の人に集中していたので、社会一般に対する影響は限定的なものでした。
しかし、様々な判断・行動のためのデータを収集・保存・分析することで、以前よりも自分たちの望む結果を高い可能性で実現できると考えられています。
例えば、
Googleの検索エンジンで人々のデータを活用して、ある検索キーワードの人に対してはどのようなページを表示させることが満足度が高いか。
Amazonの商品ページには個人属性に合わせて、好まれると思われるオススメの商品が表示されます。
上記のような問題発見や改善、判断のためにデータを活用すると言う考え方が効率的であり、今後も様々な分野で適用されていくでしょう。将来的にさらにデータの重要性は増していきます。
数社の企業にデータを独占された状況では、データに関わるサービスが適正な価格ではなくなる場合があります。
また、ある国家や社会がデータを活用できないという状況は、社会や国家の信用や成長を阻害するのではないかと考えられているため、様々な国家・社会・企業が危機感を持ち、様々な動きを見せはじめています。
以上のようにデータの確保が成果に直結すると考えられていますが、データが占有されているため、様々な主体が自分たちの状況に合わせたデータ活用ができないという危機感を募らせていると考えられます。
税金逃れの問題
今までインターネットというビジネスモデルのため、どこで売上が上がり、どこに税金を払うかということがはっきりと決められていませんでした。
特に、実体を持つものを販売していないため、低税率の国に会社を簡単に移すことができ、納税額を下げるという方法が一般的に用いられています。ちなみに、これをBEPS:ペップスと言ったります。
さらに、普通の業態とネット企業を比べた納税額の不公平を論じられることが多くあります。このようにして、BIG5の事業規模が莫大なものになっているにも関わらず、税金を払わず、利益をあげているという構造が問題視するようになってきました。
他方で、企業にとっては利益に繋がりますが、これは国家にとって実は死活問題です。
なぜなら国家の機能として人々や企業から税金をもらい、それを国民に再分配するという機能そのものが国家の様々な力を維持するものだからです。
以上のことから、ネット企業の税金逃れが国際的に大きな問題となっているのです。
伝統企業の衰退を招いている
小売や卸売などの業態の衰退に関するニュースがあとを絶たない。
アメリカでは特に顕著で、Eコマースによる影響で小売店が毎年店舗を閉鎖、もしくは倒産しているという報道が多い。
企業の競争と言ってしまえばそれまでだが、現実問題としては失業者の問題などが存在し、単純な教育によって転職などができるという話ではない。
このようなことは社会的には問題として扱われて十分に当然なことだと考えられます。
過激な内容やフェイクニュースによる世間への悪影響
これは良く民主主義とからめて論じられることがあります。
なぜなら、人々の意見や考え方はメディアを通じて世間に浸透します。
それなのに、影響力のあるメディアがフェイクニュースを発信し、それに基づいて人々が判断や行動をするとなったら、本意ではない判断や行動をしてしまう可能性があります。(ここでは人々の本意の判断や行動とは何なのかについては触れません。)
これは人民が自分たちの国や組織の運営をどうするか決めるという民主主義の根幹を揺るがす大きな問題です。
まとめ
一箇所に資源を集約することで様々なメリットがある一方、歴史から人々は危険だとも知っています。特に、人々は一定の規模感で一定の権力を握るようになった社会や組織に対して、危機感を持つのでしょう。
このようになった場合、単純な分解ではなく、今までと同じようなサービスを享受できることに加えて、多くの人に権力が分散するというシステムが必要です。
そうすることで初めて、長期的な繁栄ができるのではないかと考えています。
また、今の成長至上主義とは違う考え方を持つことも必要なのではないかと思います。世間的には、経済的な成長がすべてのように論じられていますが、実際はそんなことありません。本来、成長という概念は経済的な成長という意味以外にも使われていいものです。新しい、もしくは、以前からあるけどもっと時代にあっている考え方があるのではないかと考えるようになりました。
ある領域のおいては一国よりも強い影響力を持っていることは、国家にとって非常に脅威となります。しかし、それが良いことか悪いことかは分かりませんが、私は少なくとも一定の再分配機能による社会の福利厚生などは必要で、良いことだと考えています。ただし、それを国が担う必要があるのか?企業でも、その他の組織でも担うことができるのではないか?という問題が出てきます。
以上の問題意識を持ちながら、それぞれの問題に対する考察をさらに深めていたいと思います。