目次
はじめに
今回、ご紹介させていただく本は、『本を読む本』です。
How to read a bookです。
第1版は1940年にアメリカにて発行されました。
それから世界中で評価され、現在まで読まれている本です。
『本を読む本』を短くまとめるとどういう本なのか?
価値のある良書を、知的に、そして積極的に読むための規則を述べた本です。
さて、これだけでは理解の幅が広くて困ってしまうことがあると思います。
ですので、
・良書とは何か?
・知的とは何か?
・読書における積極的とはどういう事か?
以上の問いかけをして理解を深めていきたいと思います。
- 作者: J・モーティマー・アドラー,V・チャールズ・ドーレン,外山滋比古,槇未知子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/10/09
- メディア: 文庫
- 購入: 66人 クリック: 447回
- この商品を含むブログ (322件) を見る
良書とは何か?
良書とは考えるに値する本ということです。
逆に、考えるに値しない本は悪書ということができるでしょう。
また、別の言い方をすると読者の心を広く豊かにしてくれる本のことです。
逆に、読書の心を広く豊かにしない本のことは良くない本であると言えます。
この本の中では、
娯楽や情報だけの本のことを良くない本としています。
ところで、心を広く豊かにするとはどういうことでしょうか?
ちょっと遠回りするようですが、点・線・面・立体について考えてみましょう。
立体は、面と線と点がなくては成り立ちません。
面は線と点がなくては成り立ちません。
線は点がなくては成り立ちません。
さぁ、何を言っているか意味がわからないと思うので、
ここで、点をひとつの知識、線を思考、面を考え方、立体をその人の性格(哲学や思想、要するにある人の全体的な考え方)と言い換えましょう。
人の考え方とは、
その人の様々な問題に対する様々な考え方を総合したものと考えられます。
図1
*筆者作成
そのため、自分自身の全部の考え方はあるひとつの考え方の集まりからできていると言えます(面の集まり)。
次に、面について考えてみましょう。
先ほどの言い換えでは、面はひとつの考え方です。
面ひとつで、考え方、つまり、ひとつのアイディアや知見とも言うことができます。
図2
*筆者作成
そして、一つの考え方が面からできていると考えられるなら、面は思考という線の集まりから成り立っているということいえます。
図3(思考)
*筆者作成
次に知識は点として考えられます。これらの思考は知識の集まりから成り立っていると考えられます。知識単体では、ただ空中に浮いている状態です。知識と知識をつなげる行為である思考をしないと、一つの考え方を生み出せません。なので、僕は知識がないと考えることはできないし、知識だけでも思考することはできないと考えています。
図3
*筆者作成
ここまでのことをまとめると、知識を増やすだけではなく、思考を伴って初めて面積を広げることができると言えて、様々な知識に対して様々な思考を手に入れることで自分全体の考え方(哲学・思想)という体積が大きくなっていくのが想像できると思います。(話の流れは大→小になっています)
簡単に言い直すと、
様々な知識と様々な思考を増やしていくことで、自分の考え方が大きくなるということです。
そして、心を広く豊かにするとはどういうことでしょうか?という問いに戻ってみましょう。
自分の考え方を大きくすること・広げることは、心を広く豊かにするという事と同じような意味だと理解できると思います。
だから、
様々な知識と様々な思考をして、自分の考え方が広がるということが心を広く豊かにすることだと考えています。
最後に良書とは?という問いに答えていきましょう。
ここまでの考え方から、良書とは自分の考え方を広げてくれる本、つまり、知識と思考を両方とも提供してくれる本と言えるでしょう。
そういった意味で、知識だけを羅列したような本はいい本とは言えないし、
思考の経路が見えない本というのもいい本とは言えないでしょう。
知的とはどういうことか?
一般的に知的とは知性があるという事を指すと思いますが、ここでいう知的とは、体系的に知識としてまとめて読書を進めていくという事だと考えています。
全体から部分の方向性を把握して、逆に、部分を全体にまとめて、という作業を通して、体系的に知識をまとめていくことです。
また、これらは比較という言い方もできます。
比較することによって、関係性や共通性を見つける。
例えば、
・各章で著者の主張をまとめて、全体の本として共通する主張を見つけ出すこと。
・各節の主張をまとめて、章全体の共通するもの見つけ出すこと。
逆に、
・全体の本として共通する主張(本のタイトル)を見つけてから、部分(各章)の方向性を知る。
・章全体の主張(章タイトル)から、各節の方向性を探る。
ということです。
つまり、知的に読書をするとは、物事を比べて、体系的に物事をまとめていきながら、読書をすることだと考えられます。
読書における積極的とはどういう事か?
積極的な姿勢とは、ズバリ目的を持って読書をする姿勢です。
そして、目的を持って読書をするとは、具体的にどのような読書の方法でしょうか?
それは、問いかけをしながら読書をするという方法です。
問いかけをすることで初めて、ただ単に情報を取り入れるだけではなく、自分の思考を深めていく材料となります。
具体的にはなんで?どうして?と問いかけながら読書をすると、
有効な読書になります。
また、問いかけをすること自体、問題意識を持っている証拠です。
逆にいえば、問題意識を持って読書をすれば、自分の思考を深めていく有効な手段となるでしょう。
ただ単に読むのではなく、何かを得ようと思って読むことが大事です。
以上のことをまとめて、
価値のある良書を、知的に、そして積極的に読むための規則を述べた本
について再度考えてみると、
自分の知識や思考を広げてくれる本を体系的に分析し、理解し、本の主張や自分の考え方に対して如何に問いを発して、読書を如何に上手くするか?について書いてある本と言えます。
どのように知的に積極的に読書を進めればいいのか?
知的に積極的に読書を進めるためには以下のレベルを順に登っていかなくてはいけません。ここでいうレベルは、全部で4つあります。
レベル1:初級読書
レベル2:点検読書
レベル3:分析読書
レベル4:シントピカル読書
これらのレベルは、レベル1はレベル2を基礎に成り立っているので、レベル3もその前のレベルをすべて含めたレベルです。レベル4に関してはレベル1から3までの段階をすべて含んでいます。 それぞれの部分で似た方法がありますが、レベルが違うので、理解の仕方も変わってきます。
詳しくは本を読んでいただくとして、順を追ってざっくりと説明していきましょう。
レベル1:初級読書
単純に単語やセンテンスの意味がわかるようになるレベル。
レベル2:点検読書
本の内容がどのようなことが書いてあるか大体わかるようになるレベル。
レベル3:分析読書
1冊の本の中で著者がどのような論理で主張をしているかわかるようになるレベル。
レベル4:シントピカル読書
同じ主題(目的やテーマ)を扱う複数の本の中で各著者がどのような論理で主張をしているかを比較、整理し、自分の主張ができるようになるレベル。
以上のレベルは、下のレベルができて初めて、上のレベルに上がれるので、どんなに早くレベル4に行きたくてもレベル1から進めたくてはいけません。
このようになるのは、一冊の本が、章、節、句、単語からなっているので、単語がわからないと、句もわからない、句がわからなければ、節もわからない、また、章や節がわからなければ、一冊の本の内容がわからないといった、中身と見た目(内容と形式)の関係になっているからです。
注意:実際にはしっかり読むべき本は少ない
以上まで、 良書を知的に、積極的に読むことについて述べてきました。
最後に述べたいことは、しっかり読んだ方がいい本は意外にもとっても少ないということです。ほとんどの本が、専門書など知識、娯楽に特化した本です。
ほとんどがその場しのぎの知識であって、様々なことに応用可能な考え方を提供してくれるわけではありません。ある意味、知識を消費しているだけともいえます。
しかし、先ほど述べた1〜4レベルの読書法を通せば、知識や娯楽だけの本だとしても必ず気づきを与えてくれるでしょう。
ところが、毎回読書法をするほど人生の時間はそんなに長くありません。
『本をよむ本』を読んでみればわかりますが、毎度、本で述べているような読書法をするのは、現実的に難しいです。
だから、しっかり読んだ方がいい本はとっても少ないという前提の上で、必要な技術は、これから読む本が本当にしっかり読んだ方がいい本かどうかを知ることです。
その技術は点検読書の部分で述べられています。
技術としては簡単に説明すると、
<p・タイトル
・目次
・あとがき
・帯
<p・まとめ
・その他重要そうなところを拾い読み
を通して、自分が読もうとしている本がどのような本なのかを知り、自分にとって必要かどうかを判断します。
この読み方を意識しただけで、情報収集の効率が今までよりも高くなることは間違いありません。当たり前のことですが、このようなことを意識して思考することはほとんどないのではないでしょうか?
また、以上のことをやれば、
よくあることですが、
・調べてから意味ない情報だった。。。
・衝動的に読んだり、見たりしてから無駄な時間だった。。。
と感じることが少なくなるでしょう!
まとめ
この『本を読む本』では、本について述べられていますが、この本で述べられている技術は、その他の情報の媒体にも応用できるはずです。
例えば、雑誌、新聞、テレビ、ラジオ、広告、論文、ネットニュース、動画、画像、会話、プレゼンなど、見たり聞いたりする情報にはこのような手段は有効です。
雑誌、新聞、論文、広告、テレビ、画像、動画、プレゼンなどに関しては、視覚から得る情報です。(テレビや動画は視覚と聴覚)このような場合、重要な見出しを見ることで、後に何を言うのか大体予想できるでしょう。そして、興味があれば見る、興味がなければ見ない、という効率のいい判断ができます。
ラジオに関しては、聴覚から得る情報です。
このような場合でも、重要な話の前には、見出しの代わりのようなものがあります。
例えば、ラジオの名前、これから〜についての話をします!、といった内容がラジオの放送で言われることが多いと思います。そして、引き続き聴くか聴かないか判断できます。
また、人との会話にも応用できます。
相手のキーワードを注意深く聞いて、まとめながら聞いていると、何をいいたいのかが予想したり、分類できるようになります。
人との会話において、聞くか聞かないかを判断するのは失礼なことですが、
もっと前の段階、つまり、人に会うかどうか決める段階において、会おうとする人がどんな人か、人に聞く、ネットで調べる、などをして、どんな人かをある程度判断することができます。
なんでも効率化することはよくないと思われるかもしれませんが、
僕は、何か目的がある期間は、非常に有効な手段だと考えています。
なぜなら、多くの場合において、目的の達成には、時間の制限がともなうからです。
だから、効率的に行動するということは、とても重要だと考えています。
そして、精神的なことですが、
積極的な姿勢であるということは、いかなる時でも物事を上達させる技術だと言えます。なぜなら、積極的であるなら、自ら物事に疑問や興味を感じ、問いを発することができて、知識や思考を蓄積することができるからです。
もし、消極的な姿勢なら、疑問や興味も感じず、問いさえ発することがないでしょう。
すると、知識や思考を蓄積することもできないでしょう。
他方で、以下は違う角度からの感想ですが、
運動などの肉体を使った感覚を養うことも重要ですが、
読書や勉強などの精神を使った感覚を養うことも非常に重要です。
なぜなら、肉体の物理的な感覚は誰しもが簡単につかめる感覚で、意識せずに感じることができます、しかし、精神の感覚は自ら意識してつかもうとしないと感じることができません。そして、精神の感覚をつかむことで、物理的な感覚をコントロールできるようになります。
誰しもが、最初は、物理的な感覚からスタートするはずです。
しかし、人生のどこかの段階で精神の感覚から物事を見つめることができるように意識を変える必要性が出てきます。
なぜなら、生きていく上で、何か物事をうまくしたい場合は、自分の感情をコントロールして、物事を理性的に論理的に考えて、行動する必要があるからです。
感情のコントロールができていない中では物事を理性的、論理的に考えることは不可能です。
ここで、精神の動きに敏感な人は、「あ、今は冷静じゃないな」、「今は、ムカついているな」とかに気づけます。そして、状況を整理して対応できるでしょう。
しかし、敏感じゃない人は、「マジでむかつく」、「意味わからん」といった感情が暴走して、まともに考えることができず、同じことを何度も繰り返すでしょう。
同じことを繰り返す人と繰り返さない人では、物事の進歩に大きな差があることは明白だと思います。(何度か同じ失敗をすることは別にいいと思います。けど、何度か同じ失敗をしていると気づく必要はあると思います。)
以上の意味で、僕は、精神の動きに意識的に気を使うのは必要なことだと考えます。
最後に、僕は読書や人、物事との意識的なコミニケーションを通して、自分の精神的な動きに敏感になれると信じています。
その一つ方法として、読書をおすすめします。
以下は、今回読んだ『本を読む本』のリンクです。
『本を読む本』J・モーティマー・アドラー (著), V・チャールズ・ドーレン (著), 外山 滋比古 (翻訳), 槇 未知子 (翻訳)
- 作者: J・モーティマー・アドラー,V・チャールズ・ドーレン,外山滋比古,槇未知子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/10/09
- メディア: 文庫
- 購入: 66人 クリック: 447回
- この商品を含むブログ (322件) を見る